AI産業Morganstanley2026年7月1日 10:27

モルガン・スタンレー、AIで経理作業を半減

モルガン・スタンレーは、損益照合業務にAIエージェントシステム「FIXR」を導入し、最長6時間かかっていた作業を2〜3時間に短縮した。約100人のコントローラー全体で週約1,500時間の削減効果が出ているという。システムはあえて自律性を抑え、人間の承認・修正を通じてルールを積み上げる設計を採用している。

モルガン・スタンレー、AIで経理作業を半減

モルガン・スタンレーは、銀行業務の中でも特に正確さと速度が求められる損益照合(P&L調整)の作業に、AIエージェントシステムを導入した。その結果、従来は1冊の帳簿で最長6時間かかっていた作業が、2〜3時間に短縮された。この取り組みを主導した同社マネージング・ディレクターのトッド・ジョンソン氏が、最近開催されたVB AI Impactイベントで明らかにした。

損益照合とは、1日の取引終了後に、財務・リスク・オペレーション・取引記録など複数のシステムにまたがるデータを突き合わせ、ズレを修正する作業だ。取引ごとに膨大な数の属性が記録されるため、毎営業日の終わりには数十万件単位でデータの不一致が生じる。担当するコントローラーたちは、翌朝の締め切りまでにこれらを一件ずつ調査し、修正内容を判断・承認しなければならない。時間的プレッシャーが極めて大きく、人為ミスが起きやすい環境でもある。

このプロセスに導入されたのが、社内開発のエージェントシステム「FIXR」だ。夜間の損益計算が完了すると、FIXRは自動的にデータの不一致を分析し、過去の対処履歴をもとに解決策を提案する。内部では複数のエージェントが連携して動いており、それぞれが「過去の指示を解釈して翌朝の対処案を作る役割」「コントローラーの行動から判断ルールを学習する役割」「繰り返しのパターンを自動化ロジックに変換する役割」を担う。同じ方法で繰り返し解決された案件については、システムが固定ルールを生成して自動処理できるようになっていく。

特徴的なのは、あえて自律性を下げる設計にした点だ。FIXRはすべての提案について人間の承認を必要とし、コントローラーが修正・承認した内容は次回のサイクルに反映されていく。「自動化を進めながらも、人間の責任という要素を保持している」とジョンソン氏は述べている。同氏はまた、「コパイロット(副操縦士)というよりは、同僚に近い存在だ」とも表現した。

実際の効果として、P&L照合に携わる約100人のコントローラー全体で、週あたり約1,500時間の削減が実現しているとジョンソン氏は説明した。これは単純計算で、1人あたり週15時間相当の作業が減ったことになる。ジョンソン氏は「自律性を高めるには信頼の積み重ねが必要だ」とも強調しており、今後も自動処理できる案件は徐々に増えていくという見通しを示した。

多くの企業がAIをコーディング補助やカスタマーサポートに活用している中、モルガン・スタンレーが選んだのは精度エラーが直接的な損失につながりうる基幹業務だった。この事例は、AIエージェントの導入において「どれだけ自律的にさせるか」よりも「人間の判断をいかに効率よくシステムに組み込むか」が成果を左右するという見方を支持するものといえる。金融機関を中心に、AIを基幹業務プロセスに組み込む動きが今後加速するかどうか、実際の精度や監査対応の面での評価が注目点になるだろう。

#AIエージェント#生成AI#金融AI#業務自動化#モルガンスタンレー#ヒューマンインザループ
AI issue 編集部

本記事は、AI issue編集部が事実(ファクト)をもとに独自に作成・編集した著作物です。著作権はAI issueに帰属し、無断転載・再配布およびAIの学習・活用を禁じます。

コメント

コメントするにはログイン