Thinking Machines、大規模モデル「Inkling」を公開
元OpenAI CTOのミラ・ムラティ氏が設立したThinking Machines Labが、9750億パラメータのマルチモーダルAIモデル「Inkling」をオープンウェイト形式で公開した。米国のオープンウェイトモデルの中では総合性能で首位に立つ一方、中国の主要モデルには一部タスクで後れを取る。料金は入力100万トークンあたり1.87ドルで、同社はカスタマイズのベースモデルとして活用を促している。

元OpenAI CTOのミラ・ムラティ氏が設立したThinking Machines Labが、「Inkling」と名付けた大規模AIモデルを公開した。Inklingはテキストと画像を同時に扱えるマルチモーダルモデルで、パラメータ数(モデルの学習に使われる調整可能な変数の数)は9750億に上る。重みを公開するオープンウェイト形式で提供されており、誰でもモデルの内部構造を参照・利用できる。
オープンウェイトモデルとは、学習済みのモデルデータを外部に公開する形式のことで、企業や研究者が自社データで追加学習(ファインチューニング)しやすいという特徴がある。こうした公開モデルの普及は、クローズドなAPIしか提供しない大手モデルへの依存を減らす選択肢として、開発者コミュニティの中で一定の需要がある。Thinking Machines Labがベースモデルとしての活用を前面に打ち出しているのも、この流れに沿った戦略と見ることができる。
性能面では、AIモデルの総合的な能力を測る指標「Artificial Analysis Intelligence Index」において、米国のオープンウェイトモデルの中でトップに立つ。ただし、中国の主要なオープンモデルと比較すると、一部のタスクでは後れを取る結果も出ている。つまり、国内比較では首位に立つものの、グローバルな競争では中国勢がなお優位な分野が残る状況だ。
利用料金は入力100万トークンあたり1.87ドルで提供される。トークンとはAIモデルがテキストを処理する際の最小単位で、おおむね英単語1語がおよそ1〜2トークンに相当する。Thinking Machines Labはこの価格設定について、最高性能を目指す単体モデルというよりも、企業が自社用途に合わせてカスタマイズするための土台として位置づけて訴求している。
Thinking Machines Labは、ムラティ氏がOpenAIを退社後に立ち上げたスタートアップだ。OpenAIでCTO(最高技術責任者)を務めた経歴を持つ同氏が創業したという点で、業界から注目を集めてきた。Inklingの公開は、同社として初めて外部に公開した主要モデルになるとみられる。
今回の公開が持つ意味は、単一モデルの性能比較にとどまらない。米国のオープンウェイトモデルが中国勢に性能面で後れを取る状況は、AI開発における地政学的な競争の一端を映し出している。Inklingが中国の上位モデルに追いつけるかどうか、また今後のファインチューニング活用事例がどこまで広がるかが、Thinking Machines Labの存在感を測る指標になっていくという見方ができる。
オープンウェイトモデル市場は現在、多様なプレーヤーが参入して競争が活発化している領域だ。Inklingがベースモデルとして開発者に採用されていくかどうかは、価格競争力だけでなく、実際のファインチューニング後の性能と使い勝手にかかっている。今後、企業ユーザーによる実運用での評価が蓄積されることで、Inklingの立ち位置がより明確になっていくだろう。
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