Moonshot AI、世界最大のオープンソースAIモデルを公開
中国のAIスタートアップMoonshot AIは2025年7月、パラメータ数2.8兆個の大規模言語モデル「Kimi K3」を公開した。同社はこれを世界最大のオープンソースAIモデルと位置づけており、ベンチマーク上ではAnthropicやOpenAIの上位商用モデルと同等の性能を示すとしている。モデルの全ウェイトは7月27日に公開予定で、現在はkimi.comで試用できる。

中国の北京を拠点とするAIスタートアップ、Moonshot AIが2025年7月、同社の大規模言語モデル「Kimi K3」を公開した。パラメータ数(AIが学習で得る知識や判断の基準となる数値)は2.8兆個に達しており、同社はこれを世界最大のオープンソースAIモデルと位置づけている。モデルの全ウェイト(学習済みデータの実体)は7月27日に一般公開される予定で、現時点ではkimi.comにアクセスしてアカウントを作成することで試用が可能だ。
Moonshot AIはアリババが出資する企業であり、これまでも中国国内のAI開発をけん引してきた。ただし過去18か月ほどは、DeepSeekの急速な台頭によって市場での存在感が低下していた。今回のKimi K3公開は、その状況を大きく塗り替える動きと見られている。また今回のリリースは、2026年に上海で開催される世界人工知能会議(WAIC)を前にしたタイミングと重なっており、国際社会に向けた存在感の示し方という点でも注目される。
技術面では、Kimi K3はDeepSeekのV4 Proと比べてパラメータ数がおよそ75%多いとされる。モデルの特徴として、最大100万トークン(大量の文章や会話を一度に処理できる長さの単位)のコンテキストウィンドウ、画像を直接理解するマルチモーダル機能、そして「thinking mode」と呼ばれる常時推論モードを備えている。アーキテクチャの面では、Moonshot AIが独自に開発した「Kimi Delta Attention」と「Attention Residuals」という2つの技術が採用されており、どちらも事前にGitHub上でオープンリサーチとして公開済みのものだ。
API(外部サービスと連携するための接続窓口)の利用料金は、入力トークンが100万個あたり3ドル、出力トークンが同15ドルに設定されている。また、キャッシュされた入力トークンは100万個あたり0.30ドルまで下がる。さらに8月12日までの期間限定で、1,000ドル以上のAPI利用に対して最大30%分のバウチャーが還元されるキャンペーンも実施中だ。開発者向けには、OpenAIのSDKとの互換性が確保されており、すでにOpenAIやAnthropicのツールを使って開発しているエンジニアが乗り換えやすい設計になっている。
ベンチマーク(AIモデルの性能を比較するための標準テスト)では、Kimi K3はAnthropicのClaudeやOpenAIのGPTなど、現在最上位とされる商用モデルと同等の水準で戦えるとMoonshot AIは主張している。オープンソースのモデルがクローズドな商用システムと正面から競合するという構図は、これまでの常識を覆す可能性を持つ。新華社によれば、Moonshot AIの幹部はパラメータ数の意義について「人間の脳の神経接続のようなもので、3兆近くあることで、より多くの知識やパターンを蓄積し、深く考え、正確に答えられる」と説明している。
今回の動きは、AIモデルの開発競争における「オープン対クローズド」という構造的な変化を加速させるものと位置づけられる。高性能モデルが無料で利用・改変可能な形で公開されることは、研究機関や中小の開発者にとってアクセスのハードルを大きく下げる意味合いがある。一方で、性能面での差が縮まるにつれて、商用モデルを提供する欧米各社にとっての競争環境も変化していくという見方ができる。今後は実際のウェイト公開後に外部研究者による検証が進むことで、今回の性能主張がどこまで裏付けられるかが焦点の一つになるだろう。
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