Thomson Reuters、独自AIモデルを構築・公開
Thomson Reutersは、公開されているオープンウェイトモデルをベースに自社専用のAIモデルを構築した。法律・税務などの専門分野を主軸とする同社が独自モデルを持つことで、汎用AIサービスにはない精度とカスタマイズ性を追求する狙いがある。この動きは、他のSaaS企業がAI戦略を見直す際の参考事例になりうると見られている。

法律・税務・報道分野で知られる情報サービス大手のThomson Reutersが、オープンウェイト(公開された重みパラメータを持つ)モデルをベースに自社専用のAIモデルを開発した。オープンウェイトモデルとは、モデルの内部パラメータが一般に公開されており、企業が自由に改良・カスタマイズできるタイプのAIモデルを指す。このアプローチにより、同社はゼロからAIを構築するコストを抑えながら、自社のニーズに合わせた専用モデルを実現した。
近年、AIモデルの開発手法は大きく二分されている。一方はOpenAIやAnthropicのように、APIを通じてモデルにアクセスする「クローズド型」。もう一方はMetaのLlamaシリーズのように、モデルの重みを公開して外部利用を認める「オープン型」だ。Thomson Reutersが後者を選んだことは、エンタープライズ(法人向け)領域でのオープンモデル活用の広がりを示す一例と言える。
確認されている事実として、Thomson Reutersは公開されているオープンウェイトモデルを土台に、自社向けにカスタマイズしたモデルを構築した。この手法はファインチューニング(特定用途向けの追加学習)と呼ばれる技術と組み合わせることが一般的で、法律文書や税務情報など専門性の高いデータに対応させることが可能になる。同社の事業ドメインは専門知識への正確性が特に求められるため、汎用的なAIサービスをそのまま使うよりも、独自モデルを持つことの優位性が高いと考えられる。
このThomson Reutersの動きが業界で注目される理由の一つは、他のSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業にとっての先行事例になりうる点だ。SaaS企業はこれまで、汎用AIのAPIを自社サービスに組み込む形が主流だったが、オープンウェイトモデルをベースにした独自構築という選択肢の現実性が高まっている。コスト・データプライバシー・カスタマイズ性の三つを同時に考慮した場合、自社モデル保有は一定の合理性を持つという見方ができる。
一方で、独自モデルの開発・維持には相応のエンジニアリングリソースと継続的な投資が必要になる。オープンウェイトモデルを出発点にすることで初期コストは下げられるが、セキュリティ管理・モデルの更新・品質保証といった運用面の負担は自社が担うことになる。この点で、Thomson Reutersのような大規模な情報サービス企業と、より規模の小さなSaaS企業とでは、同じアプローチを取った際の現実的な難易度は異なる。
Thomson Reutersの事例は、AIの「使う側」から「持つ側」への移行が、特定の大企業に限った話ではなくなりつつあることを示す一つのシグナルと位置づけられる。今後注目すべき点は、同社が構築したモデルが実際のサービスにどう組み込まれ、業務の精度や効率にどんな変化をもたらすかだ。また、他のSaaS企業が同様のアプローチを追随するかどうかも、エンタープライズAI市場の方向性を測る上で重要な観察点となる。
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