AIで勝つのはAIを売らない企業、VC幹部が指摘
20年以上のキャリアを持つベンチャーキャピタリスト、チー・ファ・チェン氏が、AI時代の本当の勝者はAIそのものを売る企業ではなく、AIを活用して事業を作り直す企業だと主張している。フェイスブックの成長を早期に見抜いた実績を持つ同氏は、インターネット革命の教訓をもとに、AIをツールとして内部で使いこなす企業に長期的な競争優位があると指摘する。

ベンチャーキャピタリストのチー・ファ・チェン氏は、20年以上にわたって技術投資の最前線に立ってきた人物だ。フェイスブック(現Meta)が世界的なプラットフォームへと成長する前からその可能性を見抜いた実績を持ち、現在はAI時代の「次の勝者」について独自の見方を示している。その主張の核心は、AIそのものを製品として売る企業ではなく、AIを手段として使いこなす企業こそが長期的に利益を得るという考え方だ。
チェン氏がこの見方を持つ背景には、過去のインターネット革命から得た教訓がある。インターネットが普及した時代、最終的に大きな価値を生んだのはインターネット接続サービスを提供した会社ではなく、インターネットを使って全く新しいビジネスモデルを構築した企業だった。同氏はAIについても同様のことが起きると見ており、「AIツールを提供する側」よりも「AIで業務や体験を根本から作り直す側」に投資価値があると指摘する。
具体的には、AIを自社のオペレーションや顧客体験に深く組み込んだ企業が競争優位を築くという見立てだ。こうした企業はAIを外部に売るのではなく、内部で使い倒すことでコスト構造や意思決定のスピードを変え、他社が簡単に真似できない強みを積み上げていく。チェン氏はこの構造を「AIネイティブな事業モデル」と表現しており、業種を問わず幅広い領域で同様の変化が起きると見ている。
チェン氏の視点が興味深いのは、純粋な技術評価だけでなく、人間の行動変容や文化的な変化を重視する点にある。同氏は自身のアプローチを「文化人類学者のように考える」と表現しており、技術の普及がどのように人々の習慣や社会構造を変えるかを長期的に観察することを投資判断の基盤に置いている。この姿勢は、短期的な技術トレンドの追随ではなく、行動変容の本質を捉えることを重視するものだ。
AI産業全体が急拡大するなか、どの層に価値が蓄積されるかは投資家にとって切実な問いとなっている。モデル開発競争が激化し、AIツールが次々と商品化される現状では、ツール自体の差別化は難しくなりつつある。チェン氏の見方はこうした状況を踏まえており、AIを活用して独自の事業基盤を構築できるかどうかが、今後の企業価値を左右する主要な分岐点になると示唆している。
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