Intuit、AIエージェント基盤を4か月で2度作り直す
米Intuitは2026年のカンファレンス「VB Transform 2026」で、自社のAIエージェント基盤を約4か月の間に2度作り直したと明かした。オーケストレーション層がエージェント間の文脈喪失によるエラーの累積で機能不全に陥り、最終的に「スキル・ツール型」設計へ移行。再構築は60日で完了し、最初の動作バージョンは20日以内に完成した。

米国の財務ソフトウェア大手Intuitは、自社のAIエージェント(特定の目的に合わせて自律的に動くAIプログラム)の基盤設計を、約4か月の間に2度完全に作り直した。同社AIバイスプレジデントのNhung Ho氏が、2026年のカンファレンス「VB Transform 2026」でその経緯を明かした。最終的な再構築には60日を要したが、最初に動作するバージョンは20日以内に完成したという。
もともとIntuitは、目的ごとに特化した複数の「専門エージェント」を用意する構成を採っていた。しかしこの方式では、どのエージェントをどの用途に使うかをユーザー自身が判断しなければならず、使い勝手の面で課題があった。そこで同社は、タスクを受け取って適切なエージェントへ自動的に振り分ける「オーケストレーション層」(指揮役となる中間管理システム)を追加した。この構成は約3か月間は機能していたとHo氏は説明している。
ところがオーケストレーション層は、その複雑さゆえに破綻した。複数のエージェントが処理の結果を次のエージェントへ引き渡す際、情報を自然言語(人間が日常的に使う文章表現)でやり取りしていたため、引き渡しのたびに前のエージェントがどう判断したかという文脈が失われた。Ho氏は「10のエージェントがお互いにバトンを渡し合えば、そのたびにエラーが積み重なっていく」と述べ、エラーが構造的に蓄積する仕組みになっていたと説明した。
この診断を踏まえて選ばれた新しい設計が、「スキル・ツール型アーキテクチャ」だ。従来のように独立したエージェントを並べるのではなく、機能をより小さな「スキル」や「ツール」の部品として共有できる形に分解し、それらを組み合わせてシステムを構成するアプローチを取る。60日での再構築を実現するうえで、技術的な課題よりも社内説得が難しかったとHo氏は述べている。
経営陣への説得には、実際の顧客の問い合わせデータを使って新設計のデモを作り、既存システムと同じタスクで比較して見せるという実証的なアプローチを取った。Ho氏は「少なくとも私の考えでは、最良の証拠は顧客が何をしようとしているかだ。どんなシステムを作るにしても、その問題に応えなければならない」と語っている。一方、専門エージェントを実際に作ったエンジニアたちへの説得は別の論理が必要だった。
ホー氏がエンジニアたちに示した論拠は「スケール(規模の可能性)」だった。一つの独立したエージェントが解けるのはあくまで狭い範囲の問題だが、新しい設計に組み込まれた共通のスキルやツールは、その機能を必要とするすべての顧客に横断的に貢献できる。つまり自分の作ったものが「捨てられる」のではなく、より広い影響力を持つ形に生まれ変わるというメッセージが、現場の受け入れにつながったとみられる。
今回のIntuitの事例は、AIエージェントの実用展開がいかに試行錯誤の連続であるかを示している。エージェント技術はまだ発展途上にあり、「どの設計が正解か」は実際に本番環境で動かしてみるまでわからない側面が大きい。完成した設計を守ることよりも、問題を早期に診断して作り直す意思決定の速さが、この分野では競争力に直結するという見方ができる。
本記事は、AI issue編集部が事実(ファクト)をもとに独自に作成・編集した著作物です。著作権はAI issueに帰属し、無断転載・再配布およびAIの学習・活用を禁じます。