DoorDash、6万件の機能フラグをAIで自動整理
DoorDashは、60,000件以上のフィーチャーフラグと623のリポジトリを対象に、複数のAIエージェントを連携させた自動整理システムを構築した。50件の評価では45件で利用可能なプルリクエストが生成され、1件あたり平均13.8分・4.79ドルで処理できることが確認されている。

フードデリバリー大手のDoorDashが、ソフトウェア開発現場の長年の悩みを自動化する取り組みを公開した。同社は複数のAIエージェントを連携させた「マルチエージェントLLM」システムを独自に構築し、60,000件以上の「フィーチャーフラグ」と623のリポジトリを対象に、不要なコードの自動整理を実現している。
「フィーチャーフラグ」とは、新機能のオン・オフをコード上のスイッチで切り替える仕組みのことだ。新機能を段階的に展開したり、問題が起きた際にすぐ無効化したりできるため、多くのソフトウェア企業が広く採用している。ただし、機能の正式リリース後もフラグがコードに残り続けることが多く、時間がたつと「どのフラグがまだ必要か」の把握が難しくなる。放置すれば、コードの複雑さが増し、保守コストが膨らむという問題が現場には根強く存在する。
DoorDashのシステムは、複数の処理を組み合わせて動作する。まず、実験の運用データをリアルタイムで取得するためにMCP(Model Context Protocol:AIモデルが外部ツールやデータを扱うための標準規格)を活用し、整理対象フラグを特定する。次に、エンジニアが削除対象を承認した後、「Gitワークツリー」と呼ばれる隔離された作業環境で並列エージェントがコードを修正し、自動検証を経てプルリクエスト(コード変更の提案)を作成する。一連の流れを人の手をほぼ介さずに処理できる点が特徴だ。
50件のフラグを対象にした評価では、45件で実際に利用可能なプルリクエストが生成された。1件あたりの所要時間は平均13.8分、コストは平均4.79ドルだった。成功率は90%に相当し、速度とコストの両面で実用水準に達しているとみることができる。
この取り組みが注目されるのは、AIエージェントの活用が「新機能を作る」方向だけでなく、「既存コードの負債を減らす」方向にも広がりつつあることを示している点だ。コードの技術的負債(後回しにされた整理・修正の蓄積)は、エンジニアリング組織の生産性を長期にわたって圧迫する課題として広く認識されている。AIがその解消を担えるなら、開発者はより本質的な設計や機能開発に集中できるという見方ができる。
また、今回のアーキテクチャは汎用性という観点でも示唆に富む。エンジニアの承認ステップを挟みつつ、並列エージェントと自動検証を組み合わせる設計は、フィーチャーフラグの整理以外のコードメンテナンス作業にも応用できると考えられる。マルチエージェントの活用範囲が、研究や実験的な用途から実際の開発業務へと移行する流れを示す事例として位置づけられる。
DoorDashは今回のシステムの詳細を公開しており、同様の課題を抱える他のエンジニアリング組織にとっても参考になりうる事例といえる。今後は、こうした自動化がどこまで人間のレビューを減らせるか、また品質担保とのバランスをどう設計するかが、実運用における次の論点になると見られる。
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