TOTVSが企業データをAIエージェント向けに設計する手法を公開
TOTVSのFabiane Nardon氏が、AIエージェント向けに企業データ基盤を整備するための設計手法を公開した。データメッシュ、低遅延データベース、セマンティックオントロジー、動的なMCPツール選択などを組み合わせ、トークンコストを抑えながら精度・セキュリティ・コストのバランスをとるアプローチを解説している。

ブラジルの大手ERPベンダーTOTVSのFabiane Nardon氏が、AIエージェントに対応した企業データ基盤の設計手法を公開した。AIエージェントとは、人間の指示を受けて自律的にタスクを実行するAIシステムのことで、大量のデータを参照しながら動作する。Nardon氏は、こうしたエージェントが効率よく動けるよう、企業内のデータ層をどのように整備するかを詳しく解説している。
AIエージェントの普及に伴い、企業が直面している課題のひとつが「トークンコスト」だ。大規模言語モデル(LLM)はテキストを「トークン」という単位で処理しており、参照するデータ量が増えるほどコストと処理時間が膨らむ。特に、受発注や在庫管理といった業務システム(トランザクションシステム)のデータをそのままAIに渡すと、不必要な情報まで大量に送り込んでしまうことになりやすい。TOTVSのようなERPを中核に据える企業にとって、この問題は避けて通れない実務課題と位置づけられる。
Nardon氏が紹介した手法のひとつが「データメッシュ」だ。これは、データを一箇所に集中管理するのではなく、各ビジネス領域が自分たちのデータに責任を持って分散管理するアーキテクチャ設計の考え方を指す。加えて、AIが素早くデータを取得できるよう、低遅延(応答の速い)データベース構成を採用することの重要性も示した。さらに、データの意味的な関係性を体系的に整理する「セマンティックオントロジー」と呼ばれる概念モデルを活用し、AIが文脈をより正確に理解できるようにする工夫も紹介している。
また、AIにどのツールをいつ使わせるかを状況に応じて動的に選択する「MCP(Model Context Protocol)ツール選択」の手法も取り上げた。これは、AIが持てる情報の範囲(コンテキストウィンドウ)を無駄なく活用するための仕組みで、必要なツールだけを都度選び、余分なトークン消費を抑えることを目的としている。こうした複数の手法を組み合わせることで、トークンの消費量を削減しながら、精度を落とさずにエージェントを動かす設計を実現しようとしている。
一方、Nardon氏は技術的な最適化だけでなく、三つの軸のバランスを取ることの難しさにも言及した。「精度」「セキュリティ」「コスト」の三つで、LLMは確率的に動作するため出力が毎回一定ではなく、一方で業務システムは正確な処理を前提とする。この「非決定論的なLLM」と「決定論的な業務ロジック」をどう共存させるかが、エンタープライズAI設計における本質的な難題だと指摘している。
この取り組みが示すのは、AIエージェントの実用化が「モデルの性能」だけでなく、「データの設計」にも深く依存しているという現実だ。どれだけ高性能なモデルを使っても、渡すデータが整備されていなければ精度は上がらず、コストも膨らむ。エンタープライズ領域においては、AIを導入する前段階として、データ基盤そのものを見直す必要性が高まっているという見方ができる。今後は、こうしたデータ設計の知見が、AI活用の成否を分ける重要な競争要因になっていく可能性がある。
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