職場のAIへの好感度、5年で半減
グラスドアの従業員レビューを分析した調査によると、AIに対する肯定的な評価は2019年の81%から43%へと約5年間で大幅に低下した。雇用喪失への不安だけでなく、AIの強制的な導入、業務監視の強化、非現実的な生産性目標への不満が主な要因として挙げられている。経営幹部はAIを概ね肯定的に評価する一方、保険請求担当者などの現場職種では否定的な見方がほぼ全体を占めており、立場による評価の大きなギャップも明らかになった。

職場でAIツールを使う従業員の間で、AIに対する否定的な見方が広がっている。米国の求人・企業レビューサイト「グラスドア(Glassdoor)」に投稿されたレビューを分析したところ、AIに関する肯定的な言及の割合が2019年の81%から43%へと、約5年間でほぼ半減したことが明らかになった。
この動きを理解するには、AIが職場に普及してきた経緯を振り返る必要がある。2019年前後、職場でのAI活用は比較的限られており、多くの従業員にとってAIは「これから来る新しいもの」として期待感を持って受け止められていた。しかしその後、特に大規模言語モデル(LLM)の台頭を機に、AIツールの業務導入が急速に進んだ。新しい技術への期待感は現実の業務体験に置き換わり、評価も変化したと見ることができる。
今回の分析が示した不満の内容は、雇用喪失への不安だけにとどまらない。従業員からは「AIの使用を強制される」「AIを通じた業務監視が強まっている」「AIによって非現実的な生産性目標を課せられるようになった」といった不満が挙げられた。これらの声は、AIツールそのものへの不満というより、導入のされ方や職場での使われ方に対する批判という性格が強い。
また、AIへの評価は立場によって大きく異なることも浮かび上がった。経営幹部層はおおむねAIを肯定的に捉えている一方、保険の請求処理担当者などの現場職種では、否定的な評価がほぼ全体を占めている。同じ組織の中でも、AIを「使わせる側」と「使わされる側」の間に明確な温度差が存在するといえる。
この温度差は、AI導入の議論が往々にして経営側の視点を中心に語られてきた構造と無関係ではないという見方ができる。生産性の向上やコスト削減といった経営指標に焦点を当てる一方で、現場の従業員が日常的にどのような体験をしているかは見えにくくなりやすい。グラスドアのレビューという「現場の声」を集めた分析が、そのギャップを可視化した形となっている。
AIが職場に定着していく中で、この調査結果は企業にとって重要な示唆を持つと位置づけられる。ツールの性能や効率だけを評価基準にするのではなく、従業員が実際にどう感じているかを継続的に把握し、導入の進め方そのものを見直す必要性が問われている。強制的な導入や一方的な監視強化は、かえって組織全体の生産性や従業員の定着率に悪影響をおよぼしうるという見方もできる。
今後注目すべきは、企業がAI導入の「結果」だけでなく「過程」にどう向き合うかという点だ。現場の不満が蓄積され続けるようであれば、AI活用の効果を最大化するどころか、組織内の信頼を損なうリスクもある。従業員の声を政策や導入方針にどう反映させるかが、企業のAI戦略の成否を左右する要因の一つになっていくと考えられる。
本記事は、AI issue編集部が事実(ファクト)をもとに独自に作成・編集した著作物です。著作権はAI issueに帰属し、無断転載・再配布およびAIの学習・活用を禁じます。