GMの自動運転部門、AIエージェントでPR数が3倍に
米ゼネラルモーターズ(GM)の自動運転部門は、AIエージェントをエンジニアリングワークフロー全体に組み込んだ結果、コードのマージ件数が約3倍になったと、VP(副社長)のラシェッド・ハク氏が2026年のVB Transformカンファレンスで発表した。同部門のエンジニアがコーディングに費やす時間は業務全体の15%に過ぎず、残り85%の分析・検証・問題切り分けといった作業をエージェントが自動化することで成果を上げた。

米自動車大手ゼネラルモーターズ(GM)の自動運転部門が、AIエージェントをエンジニアリングの中核に据えた結果、コードのマージ件数(プルリクエスト)が約3倍に増加した。VP(副社長)のラシェッド・ハク氏が2026年のVB Transformカンファレンスで明らかにしたもので、リリースの速度向上と、開発の後工程に持ち越されるバグの削減も同時に実現したという。
この取り組みの出発点となったのは、エンジニアの実態調査だ。GMの自動運転エンジニアが実際にコードを書いている時間は、業務全体のわずか15%に過ぎないことが明らかになった。残り85%は、車両データの分析や問題の切り分け、実験の実行、修正案の検証といった作業が占めている。これは決して特殊なケースではなく、2019年にマイクロソフトが約6,000人の開発者を対象に行った調査でも、コーディングに充てる時間は1日あたり平均66〜96分(8時間労働の14〜20%程度)にとどまることが示されている。つまりエンジニアは、AIが登場するずっと以前から、コーディング以外の業務に大半の時間を費やしてきた。
こうした実態を踏まえ、GMは「コーディング支援ツールを追加する」という発想ではなく、エンジニアリングのワークフロー全体をAIエージェント中心に再設計するアプローチを採用した。ハク氏は「コーディングができるチャットボットを渡すだけでは、プロセスに非効率が残ったままだ」と述べており、単なるAI補助ツールの導入とは一線を画す。具体的には、ソフトウェア開発と検証を行うシミュレーション、公道での車両テスト、顧客への納車後のモニタリングという複数の「ループ」に業務を分割し、それぞれで最大のボトルネックを特定して自動化するサイクルを繰り返したという。
技術面では、AIエージェントが社内ツールやペタバイト規模のデータに接続できるよう、MCP(Model Context Protocol=AIエージェントが外部ツールやデータと連携するための規格)サーバーをカスタマイズして構築した。また、エージェントが特定の作業をどのように実行すべきかを記述したバージョン管理された「スキル」文書も整備している。実用例の一つが走行データの活用だ。公道を走る車両から収集したテレメトリー(センサーや状態の計測データ)をエージェントが自動で分析し、問題の初期切り分けを行ったうえでエンジニアに調査チケットを作成する。さらにMCP経由で、GMの車両テレメトリー可視化システム「WebViz」が使う内部ツールを直接呼び出す仕組みも整えており、GUI操作を経由せずに処理を完結できる。
この取り組みが業界にとって示唆深いのは、生産性向上の「どこに手を打つか」という問いへの一つの回答を示している点にある。コーディングの自動化が話題の中心になりがちな中、GMの事例はその前後にある分析・検証・トリアージといった作業こそが時間の大半を占めており、そこにこそ改善余地があることを数字で裏付けた。AIエージェントを「使う」段階から「ワークフローに組み込む」段階へと移行したモデルケースと位置づけられる。自動運転という安全性への要求が極めて高い分野で成果を上げた点は、他の産業へのエージェント展開を検討する企業にとっても、一つの判断材料になるという見方ができる。
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