AI産業OpenAI2026年8月11日 16:19

OpenAI、サイバーセキュリティ特化モデルを限定公開

OpenAIは、高度なサイバーセキュリティ作業に特化したAIモデル「GPT-5.6-Cyber」を発表した。同モデルは社内ベンチマークで95%の完了率を記録し、前世代モデルの57.3%を大幅に上回る。利用には新設プログラム「Daybreak Red」への審査・承認が必要で、一般のAPI利用者には公開されない。

OpenAI、サイバーセキュリティ特化モデルを限定公開

OpenAIは、サイバーセキュリティの専門家向けに特化した新しいAIモデル「GPT-5.6-Cyber」を発表した。このモデルは、脆弱性の発見や攻撃手法の検証といった高度なセキュリティ作業を支援することを目的として設計されており、承認を受けた防御側の専門家のみが利用できる形で提供される。

GPT-5.6-Cyberは、OpenAIが今年6月に公開した汎用モデル「GPT-5.6 Sol」をベースに、サイバーセキュリティ領域に特化した追加学習(ファインチューニング)を施したモデルだ。具体的には、ゼロデイ脆弱性(まだ修正されていない未知のセキュリティ欠陥)の発見や、複数の攻撃手法を組み合わせた「エクスプロイトチェーン」の開発といった、専門性の高い作業への対応力を強化している。また、防御目的にも攻撃目的にも使われうる「デュアルユース」な要求に対して、通常モデルよりも拒否応答を減らす方向で調整されている点も特徴の一つだ。

性能面では、OpenAI社内のベンチマーク「Advanced Cybersecurity Completion Rate(高度サイバーセキュリティ完了率)」において、GPT-5.6-Cyberは95%の完了率を記録した。これは、前世代の専門モデルGPT-5.5-Cyberの57.3%、そして通常のGPT-5.6 Solの1.5%と比べると、大幅な改善となっている。このベンチマークはエクスプロイトチェーンの開発、認証回避、権限昇格などの高度なシナリオを対象としたものだと、OpenAIは説明している。同社研究員のエリック・ウォレス氏もX(旧Twitter)上で、このモデルを「エクスプロイト開発などの高度なサイバーセキュリティ作業に向けた、初の大規模な能力向上の試み」と位置づけるコメントを投稿した。

提供方法は限定的で、すべてのChatGPTユーザーやAPI利用者が自由に使えるわけではない。GPT-5.6-Cyberへのアクセスには、OpenAIが同日発表した新プログラム「Daybreak Red」への審査・承認が必要だ。Daybreak Redは、脆弱性調査やペネトレーションテスト(侵入試験)、レッドチーム演習(組織のセキュリティを試す模擬攻撃)など、権限のある環境での高度なセキュリティ作業を行う専門チームを対象としている。一方、同時に発表された「Daybreak Blue」は、より幅広い企業に対して、一部の制限を緩和したGPT-5.6 Solへのアクセスを提供するもので、Redほど厳格な審査は求められない。

料金体系についても公表されており、GPT-5.6-Cyberは入力100万トークンあたり12.50ドル、出力100万トークンあたり75ドルとなっている。なお、1トークンとは、AIモデルが処理するテキストの最小単位で、おおよそ英単語1つ弱に相当する。同じ料金表に記載されたGPT-5.6 Solの入力5ドル・出力30ドルと比べると、Cyberモデルの方が割高な設定だ。長文コンテキスト向けの料金はこの料金表には記載されておらず、利用にはDaybreak Redの個別審査と承認が引き続き必要となる。

こうした取り組みは、AI企業がセキュリティ領域でどこまで踏み込むべきかという難しい問いへの、一つの答えを示すものと位置づけられる。高度なサイバー攻撃の手法を習得できるAIは、使い方によっては悪意ある者の武器にもなりうる。OpenAIが「承認された防御側専門家のみ」という厳しいアクセス制限を設けているのは、そのリスクを意識した判断だろう。今後は、審査プロセスの透明性や、不正利用を防ぐ仕組みがどこまで機能するかが注目点になると見られる。

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AI issue 編集部

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