Mira Murati創業のAI企業、初のオープンモデル「Inkling」を公開
元OpenAI CTOのミラ・ムラティが創業したThinking Machinesが、同社初のオープンソースAIモデル「Inkling」を公開した。総パラメータ数9750億のマルチモーダルMoEモデルで、Apache 2.0ライセンスのもとHugging Faceなどから利用可能。ソフトウェアエンジニアリングや音声理解の主要ベンチマークで競合オープンモデルを上回る性能を示しており、検閲への「耐性」と計算コストの制御性を企業向け機能として前面に打ち出している。

元OpenAI CTOのミラ・ムラティが創業したAIスタートアップ、Thinking Machinesが、同社初となるオープンソース言語モデル「Inkling」を公開した。商用利用に適したApache 2.0ライセンスのもとで提供され、モデルの重みはHugging Faceおよび同社独自のモデル学習API「Tinker」からすでに入手できる。
Inklingはテキスト・画像・音声を横断して処理できるマルチモーダルモデルで、総パラメータ数は9750億。アーキテクチャとしては、全パラメータのうち必要な部分だけを動的に使い分ける「Mixture-of-Experts(MoE)」と呼ばれる設計を採用しており、アクティブパラメータ数は410億とされている。合わせて、より軽量な「Inkling-Small」(総パラメータ数2760億)のプレビューも発表された。こちらは低レイテンシと低コストを重視したワークロード向けに最適化されている。
ベンチマーク性能に目を向けると、ソフトウェアエンジニアリング分野では「SWE-bench Verified」で77.6%を記録し、同じオープンウェイトモデルであるNvidia Nemotron 3の71.9%を上回った。音声理解の「VoiceBench」では91.4%を達成している。一方、フロントエンドWebデザインの評価指標「Design Arena Agentic Web Dev」では1257点とハイエンドの中程度に位置し、GLM 5.2などの中国発モデルが示すコーディング・推論特化型の性能(SWEBench Proで62.1% vs Inklingの54.3%、Terminal Bench 2.1で82.7 vs 63.8など)には及ばない部分もある。Thinking Machinesは自社モデルを「特定分野への特化」ではなく「幅広い用途に対応するジェネラリスト」として位置づけている。
Inklingが持つ特徴的な機能のひとつが「controllable thinking effort(思考量の制御)」と呼ばれる仕組みだ。処理の複雑さに応じて計算コストを調整できるこの機能により、精度とコストのバランスを利用者側でコントロールできる。多くのフロンティアモデルが内部の仕組みを非公開のまま性能を競うなか、こうした透明性・制御性の高い設計は差別化の軸となりうる。
もうひとつの特徴として、Thinking Machinesは「検閲の対象となりうるトピックにも直接的に回答する」設計であることを明示している。事実の正確さを重視する企業ユーザー、とりわけ話題の繊細さに関わらず信頼性の高い出力を求めるケースで、選択肢のひとつになりうると同社は説明している。
Inklingの公開は、オープンウェイトモデル市場が急速に充実しつつある2026年の状況を背景にしている。同社はOpenAI出身のミラ・ムラティ率いるスタートアップとして注目を集めており、初のモデル投入という点でも業界の関心は高い。商用利用可能なライセンス形態と、オンプレミス・プライベートクラウド上での運用を前提とした設計は、自社環境でのAI活用を模索する企業にとって現実的な選択肢を広げるものと位置づけられる。今後は、ジェネラリストとしての守備範囲をどこまで実用的な水準で維持できるかが、継続的な評価の焦点になりそうだ。
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