Z.ai、サイバー能力を強化した「GLM-5.3」を公開
中国のAIスタートアップZ.aiは、最新言語モデル「GLM-5.3」を公開した。前バージョンと同じ基盤モデルを使いながら、学習後の調整段階のみを拡張することでコーディング性能を大幅に向上させた。一方、サイバーセキュリティ能力が想定以上に高まったことで、同社はモデルの一部機能に制限を設けるとともに、オープンウェイトの公開を安全評価の完了後(約2週間後)に行う方針を示している。

中国のAIスタートアップZ.aiが、最新モデル「GLM-5.3」を公開した。長時間にわたるコーディング作業の性能が大幅に向上しただけでなく、サイバーセキュリティ分野での能力も従来より顕著に高まっている。同社の開発者アドボケートであるLou氏は、GLM-5.3がすでにAIコーディングツール「Cursor」に「潜在的に深刻な脆弱性」を発見したとXに投稿しており、その内容が業界の注目を集めている。
Z.aiはGLM(ゼネラル・ランゲージ・モデル)シリーズで知られており、多くのモデルをオープンソースで公開してきた実績を持つ。今回のGLM-5.3は、前バージョン「GLM-5.2」と同じ基盤モデル(パラメータ数は7430億規模)をそのまま使用している点が特徴だ。新たなベースモデルの学習(プリトレーニング)をやり直すことなく、学習後の調整段階(ポストトレーニング)だけを拡張することで性能向上を実現した。「GLM-5.3で行ったのはポストトレーニングのスケールアップだけだ」と同社は技術発表の中で明記している。
性能向上の中身を見ると、コーディング関連のベンチマーク(性能評価指標)で大きな改善が確認されている。Terminal-Bench 3.0では4.6から28.3へ、DeepSWE v1.1では46.2から66.9へ、AutomationBenchでは26.2から48.2へとそれぞれ大きく数値が伸びた。学習環境も、単独のプログラミング問題を解かせるスタイルから、コードベース・文書・実験結果などを与えて複数日分の作業をこなすような、実際の開発現場に近い複雑なタスクへと広げられている。
一方、懸念材料として浮かび上がったのがサイバーセキュリティ能力の急伸だ。Z.ai自身が認めているように、ポストトレーニングのスケールアップに伴い、セキュリティ上の能力が想定以上のペースで向上した。特に、脆弱性の特定にとどまらず、実際に悪用可能な攻撃手順(エクスプロイトチェーン)を構築する能力まで伸びたという。こうした状況を受け、ロイターは同社が「信頼アクセス」と呼ばれる管理手法を導入し、高度な機能の一部に制限を設けると報じている。
現時点でGLM-5.3が利用できるのは、同社の「GLM Coding Plan」と「ZCode」コーディング環境のみだ。APIアクセスやオープンウェイト(モデルの重みデータの公開)は、「安全性評価とセキュリティ強化が完了してから」提供するとしており、公開は今後約2週間後を予定している。オープンソースを基本としてきたZ.aiが、今回に限って段階的な公開に踏み切った背景には、こうした安全面での慎重な姿勢がある。
今回のGLM-5.3は、AI開発の方向性という点でも示唆に富む。高価なプリトレーニングを繰り返さなくても、ポストトレーニングの工夫次第でフロンティアモデルの能力をどこまで引き出せるかを実証した事例と位置づけられる。同時に、能力の向上がセキュリティリスクを想定外の速さで引き上げうるという現実も浮き彫りにした。AIの能力向上と安全管理をいかに両立させるかは、開発者だけでなく利用者や規制当局にとっても避けられない問いになりつつある。
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