AnthropicのClaudeアカウントがセッション窃取被害
Anthropicは、AIサービス「Claude」のユーザーアカウントがインフォスティーラー型マルウェアによって不正アクセスされる被害を確認し、2025年8月30日ごろに影響ユーザーへ通知を行った。攻撃者はVidarやLummaC2など6種類のマルウェアでセッションクッキーを窃取し、パスワードや二段階認証を迂回してアカウントの利用枠を消費。Anthropicは対象アカウントの強制サインアウトと返金対応を実施した。

Anthropicは、AIアシスタント「Claude」のユーザーアカウントが「インフォスティーラー」と呼ばれるマルウェアによって不正利用される被害を確認し、影響を受けたユーザーへ通知メールを送った。BleepingComputerが8月30日に報じた内容によると、攻撃者はユーザーのパソコンからClaudeのセッションクッキーを盗み出し、それを使ってアカウントにログインせずに利用枠を消費していた。
「セッションクッキー」とは、一度ログインに成功したことをブラウザが証明するための小さなデータのことだ。通常、サービスへログインすると、サイト側はブラウザにこのクッキーを渡す仕組みになっており、以降のアクセスでパスワードや二段階認証を繰り返し求めずに済む。ところがこのクッキーを盗まれると、攻撃者はそれを自分のブラウザに「貼り付ける」だけでログイン済みの状態を再現でき、パスワードも二段階認証もまったく関係なくアカウントに侵入できてしまう。Help Net Securityは8月31日、この手口を「セッション窃取が新しいクレデンシャル窃取になった」と表現している。
Anthropicが通知メールで名指しした悪意あるソフトウェアは、Windows向けにVidar・LummaC2・StealC・RedLine・Acreedの5種類、Macの一部ではAtomic Stealerの計6種類にのぼる。これらはいずれもブラウザに保存されたパスワードやクッキーをまとめてコピーする汎用型のマルウェアであり、Claudeのセッション情報はその「ついで」に収集されたものと考えられる。通知メールには「あなたのClaudeセッションも、おそらくその収集対象の一つだった」と記載されていた。Anthropicは利用状況のログから不審な動きを検知しており、アカウントのオーナーが使っていない時間帯に利用枠が補充・消費されていたことが手がかりになったという。
Anthropicが取った対応としては、対象アカウントの強制サインアウト、保存されていた決済手段の削除、確認できた不正利用分の返金が確認されている。強制サインアウトが有効だった理由は、盗まれたセッションクッキーがそのセッションに紐づいているためで、セッションを終了させればクッキーは無効になる。今回の被害アカウントはクレジットカードで直接課金される個人向けの自己申し込みアカウントで、企業のID管理システム(SSO)とは切り離された仕組みで認証されていた。そのため、企業のIT管理者が一括でサインアウトさせる手段はなく、Anthropic側が直接対処する必要があった。
感染経路についての情報は限られており、Reddit上で通知を受けたとするユーザーの一人が「海賊版ゲームをダウンロードしたことが原因だった」と投稿していることをBleepingComputerが伝えている。ただし他の被害者の感染経路はAnthropicから明らかにされていない。また、被害アカウントの総数や、企業向けのTeam・Enterpriseプランのアカウントが含まれているかどうかについて、Anthropicは公表していない。
この一連の出来事が示すのは、パスワード管理や二段階認証の強化だけではセッションクッキーの窃取を防ぎきれないという点だ。AIサービスの利用が広がるにつれ、アカウントに保存された会話履歴や連携アプリへのアクセス権限といった「ログイン後に触れられるもの」の価値も高まっている。インフォスティーラーがClaudeを標的に含めたこと自体、AIサービスが攻撃者にとって収益性の高い標的になりつつあることを示唆しているという見方ができる。利用者の側では、信頼できないソフトウェアをインストールしないこと、そしてAIサービス側では異常な利用パターンをリアルタイムで検知する仕組みの重要性が、改めて浮き彫りになった事例といえる。
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