AI技術Ibm2026年8月25日 02:21

IBM、ARMとZを1コアで動かすメインフレーム新チップを発表

IBMは半導体カンファレンス「Hot Chips」にて、ArmとIBM Z両方の命令セットを全コアで実行できる世界初のデュアルアーキテクチャ型メインフレームプロセッサを発表した。11コアそれぞれがナノ秒単位でモードを切り替えられる設計で、従来のメインフレームワークロードとArmネイティブのLinuxアプリケーションを同一チップ上で同時稼働させることが可能になる。このチップは次世代のIBM ZおよびLinuxONEシステムに搭載される予定で、2025年4月に発表されたIBMとArmの戦略的協業における初のハードウェア成果にあたる。

IBM、ARMとZを1コアで動かすメインフレーム新チップを発表

IBMは、年次半導体カンファレンス「Hot Chips」において、メインフレーム向けの新世代プロセッサを発表した。このチップは、IBMが長年使ってきた独自の命令セット(Z)と、スマートフォンからクラウドサーバーまで広く使われているArmの命令セットの両方を、すべての物理コアで実行できる。世界初の「デュアルアーキテクチャ型メインフレームプロセッサ」となり、次世代のIBM ZおよびLinuxONEシステムに搭載される予定だ。

メインフレームとは、銀行・保険会社・政府機関などが膨大な取引データを処理するために使う大型の高信頼性コンピュータのことを指す。長らく「独自の閉じた世界」として発展してきたが、近年はAIアプリケーションの多くがArmベースのLinux環境向けに作られており、メインフレームとの間に生まれる「ソフトウェアの断絶」が課題となっていた。2025年4月にIBMとArmが戦略的協業を発表していたが、今回の新チップはその協業における最初のハードウェア成果に当たる。

新チップが持つ最大の特徴は、11個あるコアすべてが「Z」と「Arm」のどちらのソフトウェアもナノ秒(10億分の1秒)規模で切り替えながら動かせる点にある。IBMフェローでIBMシステムズ開発担当CTOのクリスチャン・ジャコビ氏によると、このモード切り替えはオープンソースの仮想化技術「KVM」(カーネルベースの仮想マシン)によって実現しており、切り替えに伴う性能の低下は実質ゼロだという。仮想マシンが数ミリ秒単位で動作する中で切り替えが起きるため、そのオーバーヘッドは全体の処理時間に対して無視できるレベルに抑えられる。

具体的な動作の仕組みとしては、Arm64向けのLinux仮想マシンと、IBM Z向けのLinux仮想マシンを同じチップ上に並べて動かすことができる。その一方で、銀行の勘定系などに使われる従来のz/OSワークロードは、KVMとは別の専用パーティションで動作する設計になっている。つまり、銀行の基幹台帳処理、不正検知モデル、そしてArmネイティブの監視ツールが、同一シリコン上でメモリとリソースを共有しながら稼働するという構成が可能になる。

IBM Z・LinuxONE担当チーフプロダクトオフィサーのティナ・タルクィニオ氏は、このチップを「商業利用可能なプロセッサの中で最も強力なデュアルアーキテクチャ製品の一つになる」と述べている。この発言は、他社のチップメーカーが採用してきた「Armコアを別途搭載する異種混在設計」との対比を意識したものだ。IBMはその方法を選ばず、すべてのコアを二刀流にすることで、ソフトウェアの配置を柔軟に変えながらもハードウェアを一元管理できる設計を選択した。

この動きが持つ意味は、メインフレームの「存在意義」という問いへの一つの答えという見方ができる。現代のAIインフラは、PyTorchやその周辺フレームワークをはじめとするArmネイティブのLinuxエコシステムに大きく依存しており、その外側に置かれてきたメインフレームは「AIの時代に乗り遅れるかもしれない」という懸念を抱えていた。今回のチップは、その懸念を設計レベルで解消しようとする試みと位置づけられる。規制が厳しい金融・公共分野でメインフレームを使い続けながら、最新のAIソフトウェアを同じ基盤上で動かせるとすれば、移行コストと信頼性を両立させたいエンタープライズ企業にとって選択肢が広がることになる。

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AI issue 編集部

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