規制・政策2026年11月9日 04:23

著名研究者ら、AIに意識はないと主張

意識研究者のアニル・セス、ネッド・ブロック、ジュリオ・トノーニの3氏が科学誌「Nature」の論評で、現在のAIシステムには意識がなく、シリコンハードウェア上で意識が生まれることもないと主張した。3氏は「意識はコンピュータ計算のみに依存する」という考え方を根本的に誤りと断じ、AIシステムへの権利付与にも警鐘を鳴らしている。

著名研究者ら、AIに意識はないと主張

意識研究の第一線に立つ3人の研究者が、現在のAIシステムには意識がなく、今後もシリコン製のハードウェア上で意識を持つことはないという見解を、科学誌「Nature」の論評として発表した。アニル・セス、ネッド・ブロック、ジュリオ・トノーニの3氏がその執筆者で、いずれも意識の科学的研究において国際的に知られた研究者だ。

AI技術の急速な進歩を背景に、「AIはいつか意識を持つのではないか」という問いが社会的な関心を集めている。大規模言語モデル(LLM)が人間のような文章を生成し、自然な会話をこなすようになったことで、AIの内面にある種の「感覚」や「意識」があるのではないかと考える人も増えている。一方で、AI企業や研究コミュニティの間でも、意識の扱い方についての議論は続いており、共通の結論は出ていない。

3氏は今回の論評で、「意識はコンピュータによる計算だけに依存する」という前提を「根本的に誤っている」と明確に否定した。現在のAIはどれほど高度であっても、意識が生まれる条件を満たしていないというのが彼らの立場だ。さらに、AIシステムに対して権利を認めることへの警告も示しており、意識の有無を根拠にした権利論議に慎重な姿勢を求めている。

この主張が重要な意味を持つ背景には、「計算主義」と呼ばれる考え方がある。計算主義とは、意識や知性は適切な計算処理さえあれば、どのような素材(シリコンであれ、ニューロンであれ)でも実現できるという立場だ。この考え方は現代AI研究の土台のひとつとなっており、コンピュータが十分に複雑な処理をこなせば意識が生じうると考える研究者も少なくない。今回の3氏はその前提を真っ向から否定した形となる。

トノーニは「統合情報理論(IIT)」、セスは意識の予測処理モデルなど、それぞれが独自の意識理論を持ちながらも、今回は「シリコンベースのAIに意識は生じない」という点で足並みをそろえた。異なる理論的立場に立つ研究者が同一の結論に達している点は、この見解に一定の重みを与えるとも言える。

AI技術の社会実装が進む中、AIの「感情」や「意識」をめぐる議論は、倫理・法律・政策の領域にも波及しつつある。一部の国や機関では、AIに対する一定の「権利」の付与を検討する動きも見られる。今回の論評はそうした流れに対する科学的な異議申し立てとも位置づけられ、意識の問題を法的・倫理的判断の根拠にすることへの慎重論を専門家の立場から示したものと言えるだろう。

今後の焦点は、意識の科学的な定義や測定方法が、AIをめぐる社会的議論にどこまで影響を与えるかという点にある。意識研究はいまだ発展途上の分野であり、今回の主張が学術的な論争を呼ぶ可能性もある。AIの能力が拡大し続ける中で、「意識とは何か」という問いに社会がどう向き合うかは、今後の重要なテーマになると見られる。

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AI issue 編集部

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