企業AIの拡大、管理体制が追いつかず
VentureBeatが2026年6月に従業員100人以上の企業145社を対象に実施した調査によると、回答企業の約6割がAI活用を拡大中である一方、85%が複数のAIプラットフォームを抱え、一元管理できている企業は8%のみだった。AIの誤作動を検知する自動監視体制を整えているのは10%にとどまり、全体の責任者が存在しないと答えた企業も多い。また49%がシャドーAIを最大の問題として挙げ、25%がAIエージェントの暴走による予期しない高額請求を経験しており、拡大の速度に管理体制が追いついていない実態が浮き彫りになっている。

企業のAI活用が急速に広がる一方で、それを管理・監督する体制が追いついていない実態が、調査によって明らかになった。VentureBeatが2026年6月に実施したPulse Research(従業員100人以上の企業145社を対象)によると、回答企業の約6割(58%)がAIの取り組みを拡大中であり、「大幅に拡大している」が最も多い回答だった。しかし拡大の速さに対し、それを適切に把握・制御する仕組みは大きく立ち遅れている。
背景として理解しておきたいのは、企業がAIを導入する際、複数のプラットフォームやツールを並行して使うケースが一般的になっているという状況だ。クラウド基盤、業務システム連携、独自開発のエージェント(自律的にタスクをこなすAIプログラム)など、それぞれ異なるベンダーのサービスが社内に混在するようになっている。このような「多層化」が進むほど、全体を一元的に見渡す管理が難しくなるという構造的な問題が生じやすい。
実際、今回の調査では回答企業の85%が「自社のAIの主要基盤」を主張するプラットフォームを2つ以上抱えており、1つに統合できているのはわずか8%にとどまった。また、本番環境で動くAIモデルが誤作動したり安全でない挙動をしたりした場合に「検知できる自信がある」と答えたのは40%だったが、実際に自動監視・アラートの仕組みを整備しているのはそのうち10%のみで、残りは人による手動確認に頼っていた。AIを動かす仕組みは整っても、監視する仕組みは手作業に依存している。
管理の空白は、責任の所在の不明確さとして特にはっきり表れている。AIの管理を中央チームが統括していると答えたのは38%で、各プラットフォームのチームがそれぞれ独立して管理しているという回答は20%だった。複数プラットフォームにまたがる統治を阻む最大の障壁として最も多く挙げられたのは「全体に責任を持つ担当者がいない」(32%)で、約6人に1人(17%)は「正式な責任者が誰もいない」と回答している。
こうした責任の空白はコスト管理の失敗にも直結している。調査では、49%の企業が「シャドーAI」——つまり、中央管理外で個人のクレジットカードなどを使って非公式に稼働しているAIパイプライン——を最も深刻な管理上の問題と挙げた。さらに25%の企業は、AIエージェントが処理を無限に繰り返す「無限ループ」状態に陥り、予期しない高額請求が発生する事態を実際に経験している。財務的・業務的な被害はすでに現実のものとなっている。
今回の調査結果が示す本質的な問題は、技術の欠如ではなく「誰がAI全体に責任を持つのか」という組織的な問いへの答えがないことだ、と見ることができる。AIの導入規模が大きくなるほど、プラットフォームをまたいだ全体像を把握し、問題が起きたときに素早く対処できる体制が必要になる。自動監視ツールの整備や、AI管理の責任者ポジションの設置など、「拡大と統制のバランス」をどう取るかが、企業AI戦略の次の焦点になるという見方ができる。
今回の調査サンプルは従業員100〜2,499人規模の中堅・準大企業に偏っており、特定のセクターに限定した調査ではないが、それでもこれだけ広く課題が共有されているという事実は重い。AI活用の競争が激化する中で、拡大のスピードだけを追い求めるのではなく、管理体制の構築が実質的なリスク管理の課題として浮上している。
本記事は、AI issue編集部が事実(ファクト)をもとに独自に作成・編集した著作物です。著作権はAI issueに帰属し、無断転載・再配布およびAIの学習・活用を禁じます。