GrabがAIエージェントで定型分析業務を削減
東南アジアの配車・配達サービス大手Grabは、AIエージェントを活用したデータ分析業務の自動化により、アナリストが担う定型作業の比率を2024年2月の44%から6月には30%へ引き下げた。同社はAIエージェントの自律性、認定済みデータ、コンテキスト管理、人間による監督を組み合わせたアプローチを採用している。

東南アジアのライドシェア・配達サービス大手Grabが、AIエージェントを活用してデータ分析業務の自動化を進めている。その成果として、アナリストが担う定型的な機械作業の比率は、2024年2月の44%から6月には30%まで低下した。約半年で14ポイントの削減という変化は、AIを業務フローに組み込む取り組みが着実に成果を出していることを示している。
そもそも「定型的な機械作業」とは何か。データ分析の現場では、特定の指標(メトリクス)の確認、データの抽出、SQLというデータベース照会言語を使ったクエリ(問い合わせ)の作成といった繰り返し業務が日常的に発生する。これらは専門知識があればある程度パターン化できる作業であり、本来アナリストが創造的な分析に集中するための「障害」ともいえる存在だ。こうした業務をAIが肩代わりすることで、人間の専門家がより高度な判断や解釈に時間を使えるようになるという考え方が、今回の取り組みの根底にある。
Grabが採用したのは、AIエージェントを中心に据えた複合的なアプローチだ。AIエージェントとは、指示を受けて自律的に複数のステップを実行できるAIシステムを指す。Grabはこのエージェントの自律性に加え、品質が保証された「認定済みデータ」の活用、エージェントが作業の文脈(コンテキスト)を適切に保持する仕組み、そして人間が結果を確認・監督する体制の4つを組み合わせた。さらに「セルフサービス分析」の仕組みも整備し、メトリクスの確認やデータ照会、SQL作成といったリクエストをアナリストの手を借りずにこなせる環境を構築した。
なぜGrabがこうした取り組みを進めているのか、という背景も理解しておく必要がある。Grabは東南アジア各国で膨大な取引データを日々生成しており、それを分析する需要はビジネスの拡大とともに増え続けている。一方で、高度なデータアナリストの採用・育成にはコストと時間がかかる。AIによる自動化は、そのギャップを埋める現実的な手段として位置づけられる。近年、多くのテック企業がデータ分析の自動化を模索しているが、実際の数値をもって成果を公表した事例は多くない。
この取り組みが業界にとって持つ意味は、単なる効率化の話にとどまらない。Grabの事例は、AIエージェントを「自律性に任せきる」のではなく、認定データや人間の監督と組み合わせて運用することで、信頼性と実用性を両立できるという一つのモデルを示している。AIを導入すれば自動的に精度や信頼性が担保されるわけではなく、データの品質管理と人間の関与をどう設計するかが重要だという見方ができる。
今後注目すべき点は、定型業務の比率がどこまで下がるか、そして削減された分の業務をアナリストがどのような高付加価値な活動に振り向けているか、という点だろう。AIによる業務自動化の真の価値は、削減した作業時間そのものよりも、空いたリソースが何に使われるかにかかっていると位置づけられる。Grabの事例は、その問いに向き合う実践的な試みとして、同種の課題を抱える企業にとって参考になる可能性がある。
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