AI産業Instacart2026年7月29日 12:21

Instacart、エンジニア業務の97%をAIに移行

食料品デリバリー大手InstacartのCTOアニルバン・クンドゥ氏がVB Transform 2026で、同社エンジニアの97%のケースでAIがコード生成・管理を担い、人間がコードを直接読む場面がほとんどなくなったと明らかにした。AIの活用により技術的負債の問題がほぼ解消され、本番環境での障害検出精度も60%超から90%超に向上したという。

Instacart、エンジニア業務の97%をAIに移行

食料品デリバリー大手Instacartのエンジニアリング部門で、コードを自分で読む機会がほとんどなくなっている。同社CTOのアニルバン・クンドゥ氏がイベント「VB Transform 2026」で明らかにしたところによると、現在のエンジニアのうち97%のケースでコードを直接読まずにAIが生成・管理を担っているという。繰り返しが多く量の大きい定型的な作業をAIエージェントが引き受けることで、人間は判断や意図の解釈、例外対応が必要な問題に集中できる体制に移行しつつある。

こうした動きは一日にして起きたわけではない。ソフトウェア開発の現場では長年、定型コードの作成や既存コードの保守といった反復作業にエンジニアの時間が費やされてきた。生成AIの台頭でコード生成の自動化が現実的になると、先進的な企業の間では「人間がすべきこと」の定義を見直す試みが広がり始めている。Instacartはその一例だが、実際の業務フローにまで踏み込んで体制を再構築している点で、業界の中でも具体的な事例として位置づけられる。

実務面では、特に新しいプロジェクトを中心に、コードが週単位で生成・再生成される運用に移行している。これにより「技術的負債」—古くなったコードや使われなくなった処理が積み重なる問題—をほとんど気にしなくなったとクンドゥ氏は語る。使われなくなったコードは自然に落とされ、必要なときに再構築される仕組みで、かつてアセンブリコードやオブジェクトコードを扱っていたころの開発スタイルに近い感覚だという。

一方、残る3%については、レガシーシステム(古い技術基盤で動くシステム)やコンプライアンス対応、遅延に敏感な処理など、人間の慎重な判断が欠かせない領域だ。また、使われていないコードや中途半端な状態のコードが大量に残っている部分も該当する。こうした箇所に対してInstacartは「Atoms」と名付けたプロジェクトで段階的に整理を進めており、大きな一枚岩のシステムを細かく分解し、よりシンプルで管理しやすい形に再構築している。

AIによるコード生成が増えると、従来の「コードレビュー」の意味も変わる。構文の正しさはAIが保証するため、人間が確認すべきなのはコードの見た目ではなく「意図」になる、とクンドゥ氏は説明する。この考え方に基づき、開発者が目的に沿った質問を複数のAIモデルに対して適切に投げかけられるよう育成する「インテントモデル」への移行を進めている。評価の面では、月間約7000件の自動評価が実行され、開発者からの8000件超のリアルタイムの問い合わせに対して約99.9%の精度で回答するシステムが稼働している。

信頼性の管理においても、AIの活用が進んでいる。Instacartは、自社のサービスで実際に起きた障害や原因分析の記録を学習データとして使ったAIシステムを構築した。一般的な障害パターンを学習させるのではなく、自社固有の失敗と対処の歴史を与えることで、本番環境での問題の検出・対応精度が約60%から90%超に向上したとしている。「Blueberry」と呼ばれる社内ツールは200以上のSlackチャンネルを監視し、人間が見落としがちなパターンを検出する役割を担っている。

Instacartの事例が示すのは、AIの導入が単なる効率化ツールの追加にとどまらず、エンジニアの役割そのものを変えつつあるという点だ。コードを書く能力よりも、AIに何をさせるかを設計し、その意図を適切に伝える能力が求められるようになるという見方ができる。技術的負債の解消や障害対応の精度向上といった具体的な成果が出始めている今、こうした体制の変化がソフトウェア開発の現場でどこまで広がるか、他の企業がどう追随するかが今後の注目点となる。

#AIエージェント#生成AI#ソフトウェア開発#技術的負債#Instacart#コード生成#SRE
AI issue 編集部

本記事は、AI issue編集部が事実(ファクト)をもとに独自に作成・編集した著作物です。著作権はAI issueに帰属し、無断転載・再配布およびAIの学習・活用を禁じます。

コメント

コメントするにはログイン